服好きの悩みから

まずは、お二人でブランドを始めようと思ったきっかけを教えてください。

私たちは、夫婦で企画やデザイン、販売などのブランド運営をしています。お互い学生の頃からファッションが好きで、よくファッションの話をしたり、お互いの服を譲りあったりしながら、「いつか二人でブランドを始めたり、好きなことを仕事にできたらいいね」という話をしていました。

そうした中で同棲を始めることになり、服を譲ることが減り兼用することが増えていきました。しかし、兼用を前提に服を購入するわけではないので、お互いの服を収納するスペースがどんどんなくなっていくんですよね…。そういった課題に身をもって直面した時に、自分たちのような悩みを持っている方に向けたブランドができないか、という考えが現実味を帯びてきました。

ILOYに込めた想い

ブランドコンセプトを教えてください。

『ILOY』というブランド名は、夫婦の結婚記念日である「1104」から着想を得て付けた名前です。このブランド名との出会いが私たちのブランドの方向性を位置付けてくれました。当初は、自分たちの課題意識から“兼用”をキーワードにした「夫婦が作る、夫婦のための服」というブランドコンセプトを掲げていました。

しかし、ある日このブランド名が「I love only you.」の頭文字であることに気づき、はっとさせられました。私たちがお客様に届けたいのは、“愛”であり、想いを交わし合うきっかけを作りたかったのだと。そして、「夫婦のための服」ではなく、「さりげない愛言葉（合言葉）」を届けるブランドを目指すことに決めました。

ブランドとして大事にしていることは何ですか？

「さりげない愛言葉」というのは、「夫婦で想いを交わし合うための共通言語」という意味合いがあります。さまざまな夫婦の形がある中で、共通言語はペットや子どものこと、趣味のことかもしれません。その一つに私たちのブランドのアイテムがあって欲しい、という想いがあります。だからこそ、私たちの商品によって「さりげない愛言葉」が生まれるような表現をすることにこだわりをもつこと。そして、商品が夫婦の暮らしにとって大切な存在になるように、まずは私たちが消費者の立場になって“本当にいいもの”であるものを追求していくことを大事にしています。

また、ブランドプロミスの一つに「ミニマル」を掲げています。夫婦で運営するブランドだからこそ、ミニマルな運営体制が実現できています。表には見えない運営コストを極力削減し、お客様には“本当にいいもの”を適正価格でお届けすることも大事にしているポイントのひとつです。

そして、極端に言えば、世の中にある多くのものは兼用をしようと思えばできてしまいます。その中で、私たちのコンセプトに共感し、選んでくださるお客様の気持ちを裏切るようなことは絶対にしたくない。だからこそ、デザインやブランドの在り方に「夫婦のためのブランド」としての一貫性を常に意識しています。

夫婦にとっての定番服

ファーストアイテムのこだわった点を教えてください。

今回作った長袖Tシャツは、どんなボトムスにも合わせやすく、「これを着ていればオッケー」という使い勝手のいいアイテムを目指し、あえてトレンドを追いかけたデザインではなく、定番アイテムとしてシルエットや質感にこだわりました。

夫婦での兼用を前提としているので、メンズ・ウィメンズアイテムのそれぞれの魅力をバランスよくミックスしてデザインに取り入れています。一見オーバーサイズでメンズライクという見え方にはなっていますが、ワイドはオーバーサイズの一方で、着丈を少し短めにしたり、首元はあえて華奢感が出るボートネックを掛け合わせたりすることで、男性と女性のどちらが着てもスマートに見えることを意識しています。夫婦二人で検討を重ねたからこそ、絶妙なバランスにたどり着くことができました。

また、ラフに使いやすいタフさも重視していたので、着れば着るほど風合いが出て、長く付き合いやすいオーガニックコットン100％の生地を選びました。カジュアルなハリ感と上品さを兼ね備えたアイテムに仕上げることができたと感じています。ある夫婦にとってはクローゼットにあると安心するものであったり、ある夫婦にとっては二人の定番服であったり、私たちが作った服がそんな存在になってくれたら嬉しいな、と思っています。ぜひいろいろなシチュエーションで使い倒して、夫婦で共有してきた歴史を刻んでいっていただけたら嬉しいです。

プラスとマイナス、どちらも夫婦の絆を強くしてくれる

これからどのようにブランド展開していきたいですか？

デザインバリエーションやカテゴリーの拡充に取り組んでいきたいです。今回作ったアイテムは、兼用することで「今日は私が着てもいい？」「あれは今どこにある？」というような何気ない会話が知らず知らずのうちに生まれるような、夫婦の暮らしにプラスになる側面が強いアイテムだと思っています。

そういったアイテムも増やしていきたいですし、兼用によって夫婦の日常にあるちょっとした面倒や無駄、スペースや時間がマイナスされるようなアイテムの企画にも挑戦したいと考えています。プラスとマイナスどちらの側面を持つアイテムも、結果的に夫婦に余白をもたらしてくれて夫婦の絆を強くしてくれる、そんなブランドを目指していきます。